5mm径のドリルが欲しいのではない

お客様は5mm径のドリル(の歯)が欲しいのではなく、5mm径の穴を開けたいのです。
お客様が期待しているものはドリルの歯の品質ではなく、ドリルが開けた穴の品質なのです。つまりドリルの出来栄えではなく、ドリルが行う仕事としての加工結果(穴)の品質が高いことが期待する価値であることはお判りいただけると思います。お客様にとっては何が欲しいのか(What to get)ではなく、何がしたいのか(What to do)が重要なのです。

これを機械に当てはめてみると多くのお客様にとってより大切なのは製品自体の品質ではなく、その機械が為す仕事の品質なのではないでしょうか?まともに仕事をしてくれない故障の多い機械などはもってのほかです。
例えば農業機械について考えてみると、お客様はその機械が欲しくて多額の代金を支払われるわけではなく、品質の高い農作物をたくさん作りたい、作物の質と量でよその農家に勝ちたい、と思って決して安くない製品の購入に投資しているのではないでしょうか。万一壊れて作業ができないことなどあればお客様がお怒りになるのは当然のことです。お客様ご自身も製品(機械)の品質の良し悪しに目を向けてしまいがちですが、本当にしたいこと(What to do)は優れた作物をより多く生産することなのではないでしょうか?
こういうお話をすると「お客様からは(作物の出来には関係のない)農機の塗装に関する品質のご指摘もありますよ」とおっしゃる品質担当の方がいるかもしれません。
自動車の場合と比較してみましょう。お客様は決して「移動」や「運搬」だけのために車を購入されるわけではありません。工業製品としては珍しく自動車は「愛車」と「愛」の字をつけて呼ばれることがあるように、愛犬と同様「愛(め)でる」対象なのです。したがって塗装品質や建付けなどの見栄え品質もお客様に重要視されているのだと思います。効率的に移動すること(What to do)だけではなく、愛せること(What to love)、容姿が自分の好み通りであること(What to see)さえもがお客様にとっての価値なのではないでしょうか?農機にも実は同じように期待されている「愛でられる」べき価値があるのかもしれません。

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